No.11 下地処理の必要性
下地処理は塗装のかなめと言っても過言ではないと思います。塗装を行うえで欠かせない工程が、「下地処理または素地調整(ケレン)」です。塗装が成功する(期待される塗膜の耐久性が保持される)ためには、適正な塗料を使うこととその塗料に適した素地調整(ケレン)を行うことが大切です。
素地調整(ケレン)が塗装で重要な理由は、塗膜事故の大半が素地調整(ケレン)に起因するとの報告もあるからです。弊社の塗料事業においても現場で起きる塗膜の欠陥(膨れ・剥がれ)は素地または旧塗膜に起因するケースあります。
下地処理または素地調整(ケレン)のポイント
躯体表面の状態が塗装して密着する面であるかどうか、金属面の発錆、旧塗膜面では剥がれ、浮き、砂埃、汚れ、藻やコケの付着など「密着阻害物質」が素地に残った状態で塗装を行ったら、塗装事故が発生する頻度が上がります。「下地処理または素地調整(ケレン)」が完璧であれば、塗装が成功する確率は上がると思います。
次のコラムでは 素地(調整)の種類についてお伝えしようと思います。
No10. 塗装における重要な工程は何?
前回コラム2回にわたって塗装の良し悪しを決める第一の条件「塗料」についてお伝えしまたが、塗料の種類は幅広くほんの一部です。
用途に適した塗料を使用したら良い塗膜になるのは当然!はたしてそうでしょうか。
ここでは、良い塗膜にするために重要な工程「塗装」(環境条件と塗装されるもの(被塗装物))についてお話します。
塗装を行うとき何を考えますか?塗装したい場所(または塗装されるもの(被塗装物))の変化ではないでしょうか。
塗装したい場所に 塗料の機能(美観・保護・特殊機能)を付与させるため に塗装を行うのが一般的です。
塗料の機能を発揮した塗膜を形成するために重要な工程が塗装です。当たり前ですが・・・
当社のメイン事業である戸建て住宅の塗装でみてみると、塗装箇所は住宅の全面塗装、部分塗装、外装部分、室内部分とさまざま。
一般的には、外装塗装がメインですので外装部材の被塗装物の一例を示します。
【住宅外装部材の一例】
屋根部材 | 外壁部材 | パラペット |
---|---|---|
樋 | 庇 | 基礎 |
雨戸、戸袋 | 手すり | 笠木 |
破風 | シャッター | 門、門扉 |
玄関ポーチ | アプローチ | 等 |
各部材の素材は、セメント系、瓦、窯業系、サイディング、金属、プラスチック、木工、コンクリートとさまざま。
素材に適した 塗料の選定はもちろんですが、塗装される被塗装物の表面状態(旧塗膜の有無や密着度合、表面凹凸や劣化状態)を把握することが塗装においては重要です。
目視確認だけでは表面状態の良し悪しを判断するのは難しいです。
被塗装面が何か?基材に密着?浮いた塗膜や埃、汚れ、藻コケ等塗料の密着を阻害する物質の有無?シンナー成分で溶解するしない?等の確認と調整が必要です。
そこで必要な工程が下地処理(ケレン)工程です。
次のコラムではこの下地処理についてお伝えしようと思います。
No9. 塗料についてさらに詳しく
前回コラムで良い塗料(内容物)は3つの必須条件を備え、用途に適した塗装系と説明しました。
この表現だけではいささか大雑把すぎるかも・・・
もう少し塗料について掘り下げてみましょう。
塗料や塗装を複雑にしている一つの要因は、さまざまな下地素材に対応した下塗り塗料が多数あり、耐候性や意匠性を良くした中塗り、上塗り そして塗装系も多岐にわたっていることが言えます。
別の要因では、塗料自体が水系と溶剤系に大別されること、物理的に乾燥・硬化の過程が違うことも解かりにくさと言えます。
乾燥・硬化の過程においては大気中に揮発する成分と塗膜となる成分とに別れ、揮発する成分が有機溶剤が大半、もしくは全て、であれば溶剤系塗料、水が大半、もしくは全て、であれば水系塗料とに区分されます。
かつては速乾性でTX(トルエン、キシレン)リッチな強溶剤塗料もありましたが、昨今の環境問題への対応で弱溶剤化、水系化にシフトしています。
塗膜になる過程も様々です。
塩化ビニル樹脂のようにシンナーである溶剤成分が揮発することで塗膜になり、その塗膜をシンナーで溶かすと塗膜が溶け出し元に戻る(可塑性)物や、2液混合タイプのエポキシ樹脂やウレタン樹脂のような主剤と硬化剤を混合し、化学反応で塗膜硬化するもの(硬化性)や、水系塗料のような、水が蒸発しエマルジョン粒子が濃縮圧着(融合)して膜を形成するものなど様々あります。
塗料、塗装工事を複雑にしているのは上記と重複しますが、あらためて塗料の種類が多いことです。
塗膜となる主成分の油脂や合成樹脂の種類が多く、それに加え分類も多岐にわたります。
弊社が取り扱う戸建て住宅塗装工事においてだけでも下記のような分類になります。
被塗物
セメント用、金属用、プラスチック用
塗料分類
アクリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ塗料、ウレタン塗料、フッ素樹脂、強溶剤系、弱溶剤系、水系
塗料状態
1液タイプ、2液混合タイプ、水希釈あり、既調合塗料、シンナー、エマルジョン、調合ペイント
性能
錆止め塗料、防藻・防カビ塗料、抗菌塗料、防汚塗料、耐火塗料、等
塗膜外観
艶有、艶消、透明、不透明、エナメル、多彩
用途
下塗用、中塗用、上塗用、内装用、外装用
塗装方法
ローラー、刷毛、吹付、
塗料分類を深掘りするとキリがありませんのでこのへんで。
塗料の選定は各塗料メーカーが推奨する塗装仕様が望ましいのはもちろんですが、なんといっても現場での施工実績が一番の判断材料と言えるのではないでしょうか。
塗料(内容物)自体は半製品ですので塗膜になってからが勝負です。
良い塗料と良い塗装で十分な施工実績があるものを選ぶことが重要と思います。
No8. 良い塗料(内容物)とは?
前回コラムで塗料自体(内容物)と塗装条件(環境や条件)、そして塗装されるもの(被塗装物)が良い条件でそろってこそ、塗料の価値が発揮されるとお伝えしました。
それではまず塗料自体(内容物)の良い条件とは何でしょう。
明治期までは漆や柿渋やペンキ(ボイル油)などの自然由来の塗料が主流でした。
1950年代になって合成樹脂塗料の台頭で塗料メーカーが増えて、塗料の種類も飛躍的に増加してきました。
各塗料メーカーから様々な塗料が商品化されて、汎用品から高級品まで様々な塗料が流通しています。
どんな高価な塗料であっても塗料としての条件を満たしていることが大事になります。
塗料としての条件とはいったい何でしょう。塗料といえるためには 最低限3つの条件が挙げられます。
➀ちゃんと塗ることができること(均一な粘調な液体状態である)
②ちゃんと密着すること(被塗装面にくっつく)
③ちゃんと塗膜に変化すること(液体から塗膜に変化)
しごく当然のことですが塗料の必須の3つの条件と言えます。
「塗料が容器内で固まっている」、「密着しない」、「塗膜にならない」
というのは塗料の価値を発揮しないばかりかトラブルの原因になります。
上記の条件を満たすことは塗料としての必須条件です。
必須条件を満たした上で良い塗料として重要なことがあります。
それは、用途に適した塗装系です。塗装系とは下塗り塗料、中塗り塗料、上塗り塗料といった組み合わせ塗装仕様のこと。
塗装系は各層の役割分担で被塗装物を被覆して塗膜効果を発揮します。
例えば、下塗り用塗料を上塗り塗料として使用したら塗膜効果が得られないばかりか剥がれ・膨れ・変色などのクレームにつながる恐れがあります。
従って、良い塗料(内容物)とは上記の3つの必須条件を保ち、用途に適した塗装系の塗料であることと言えます。
No7. 塗料の良し悪しとは?
前回コラムで塗料には「美観・保護・特殊機能」があって、建て替えるより安価で建物の躯体を保護し、かつ塗膜の特殊機能が期待できるメリットをお伝えしました。
塗装工事完了後は、塗膜が期待通りにメリットを発揮してほしいものです。
ただしまれに塗膜が剥がれたり膨れたりする場合があります。
キレイな塗膜を得るためには、塗料だけでなく他にも何か条件が揃う必要があるようです。
塗膜の話をする前に、もういちど塗料の定義について考えます。塗料の定義はさまざま謳われています。
一例を挙げると
「塗料とは、流動性をもち物体の表面に塗り拡げられて薄い膜となり乾燥するとその面に固着し、その物体の保護・美装およびその他の特殊性能を持つ連続膜(個体)となるもの」
とあります。
要約すれば物に塗料(液体)を塗って個体(塗膜)にして価値を発揮させるということですね。
お伝えしたいことは、当社は塗料も販売していますが、真の価値は塗膜になってから発揮するということです。
・・物体の表面に塗り拡げられて薄い膜となり、乾燥するとその面に固着・・ とは塗装工程において行われます。
したがって、塗料の良し悪しとは塗料自体(内容物)と塗装(環境条件)そして塗装されるもの(被塗装物)の各要素が良い条件で揃ってこそ、その価値を発揮するということ と思います。
塗料の難解さは、このようにさまざまな要素が揃う必要があるということかもしれません。
No6. なぜ塗装するのですか?
今回のコラムから、塗料と塗装 について(わかる範囲で)お伝えしたいと思います。
当社は藤倉化成という化学品メーカーの子会社になります。親会社の塗料を製造する工場と塗料販売、塗装工事の施工管理を生業としております。従って、塗料の研究開発における最新のうんちくまでは持ち合わせておりません。お伝えできることは、塗料の製造・販売・施工に長年携わってきた立場から塗料の変遷と良し悪しについてになります。
次回も引き続き塗料についてお話します。
No5. フジケミカルが目指す現場の安全活動とはなに?「遠賀工場編」
前回コラムは、「塗装現場」の安全活動についてご紹介しました。
足場の安全、資材管理、掲示、塗装品質等をフジケミスタンダードに従って、協力会加盟の工事業者様と共にレベルアップに努める活動とお伝えしました。実際は現場ごとにさまざまな状況があって管理も容易ではありません。
今回コラムでは、製造現場(遠賀工場)の安全活動についてご紹介いたします。
事業所内での業務、設備機器、従業員、定常作業という面では個々の塗装現場より管理しやすい面もあるかもしれません。
塗装現場との違いは、工場内の機材、製造設備、原料、資材等の種類や取扱量が多く誤った作業手法は、重大な危険を引き起こすかもしれない現場とも言えます。
社内ルールや社員同士の日々の情報共有が安全及び品質について重要と感じています。
今から約30年前に現在の遠賀工場が竣工しました。
当時、筆者は新人かけ出しの頃で「安全第一」という言葉を聞いてはいましたが、遠賀工場のような小規模な工場では、安全というより作業効率(早さ)を優先させた作業手法が多かったような気がします。
工場も整理整頓されているとは言いがたい状況だったと記憶しています。今では危険だと思われる作業も職人技として捉えられ 先輩から後輩へ伝授されていた時代だったのかもしれません。
時代の移り変わりとともに、今日では安全意識の高まりと法整備が進んでS(安全)・Q(品質)・C(コスト)・D(納期)を意識した行動に変化してきたと感じます。
遠賀工場の安全活動はなに?と訊かれると真っ先に「5S活動」というワードが挙げられます。
5Sというより3S(整理、整頓、清掃)。みんなで工場をきれいな状態に保つため日々努めること。
どの事業所でも安全衛生活動はマストな時代になりました。みんなが意識して3S活動を行うことが製造現場の安全活動と考えます。
SQCDの基本は3S活動であると考え、従業員が安心、安全で働くことができる環境を構築するため全員で3S活動をこだわりをもってやり続けることが大事だと考えます。
No4. フジケミカルが目指す現場の安全活動とはなに?「塗装現場編」
高所で作業するときは、法令で「足場の設置」が義務付けられています。
足場は、高所で作業する作業者の安全と効率的で高品質な作業を行う上で必要不可欠なものです。「足場の設置」は専門的な技術と資格を有する足場の専門の業者が行います。建物の形が変われば足場の組み方も変わり、作業者は物件毎に設置された足場で塗装工事を行います。高所作業時のリスクは墜転落が想起されます。建物と足場の隙間が広すぎたら危ないですよね。
当社の「現場巡回」の目的の一つは足場の安全性の確認です。作業者は足場の作業床に命を預けていると考えても過言ではありません。具体的にはチェックシートを用いて、足場設置の標準が保たれているか、足場内に危険な箇所がないか等を確認し、人員や資材の管理、作業の調整、安全教育の徹底等 様々な取り組みを行います。
作業者の安全面はもちろんのことですが、品質面も「現場巡回」で確認しています。
私たちフジケミグループは「フジケミスタンダード」で安全・品質の両面で明確な基準を設けています。
内容は
・作業車両の駐車ルール
・備品
・表示看板
・予定表
・KYボード
・作業時の服装
・足場基準
・KYミーティング
・電線引込線防護管
・メッシュシート養生
・塗り切り確認 等々
多岐にわたります。
どの塗装現場も基準が常に保たれるよう情報の共有化に努めております。
塗装現場の安全活動は、当社からの指導だけではなく、協力会加盟の工事業者様と安全・品質の情報を共有化し共にレベルアップに努めて高クオリティな状態で工事を完了させてお施主様へ引き渡しを行うことだと考えております。
No3. 現場の安全活動とはなに?
私たちの会社で現場は2つの事業に存在します。
一つは「住宅塗装事業」における塗装現場です。あと一つは「製造事業」における製造現場(遠賀工場)です。
どちらも同じ現場ですが、安全活動の管理方法や管理レベルに違いがあります。
塗装現場と製造現場でどのような違いがあるのか見てみましょう。
一般的には 四つのフレームワーク(人・設備・材料・方法)があります。
塗装現場 | 製造現場 QMS | |
---|---|---|
人 | ・当社従業員による現場調査、工程管理、品質・安全管理、等 ・協力会加盟の業者様による施工 ・お施主様ご在宅 |
・当社従業員による工場内作業 ・従業員の力量管理 |
設備 | ・戸建て住宅・集合住宅 ・足場、メッシュシート、養生等は物件毎 |
・設備・機械 ・操作マニュアル |
材料 | ・邸別毎 塗装仕様、指定材料 | ・原材料、缶、副資材、製造品、他 |
方法 | ・安全管理(足場・養生・装備・材料) ・塗装工法、引渡し |
・プロセス管理、プロセスアプローチ ・QMS運用 |
上記表はほんの一例ですが、塗装現場の方は現場毎に固有の管理が必要になるようです。
一方、製造現場は数百を超える資材や商品、製造プロセス管理があり、こちらも容易ではありません。
日々、従業員同士が顔合わせして情報共有しうる製造現場と、個々の塗装現場ではおのずと管理方法は違ってきます。
どちらも当社にとっては重要な現場であり、安全および品質での事故は許されません。
私たちの会社は「安全第一」を掲げ労働災害の撲滅、ゼロ災害を目指して日々活動しております。
次回のコラムは、一つ目の塗装現場で当社が目指す安全活動についてご紹介したいと思います。
No2. 塗装工事の施工管理業務ってなに?
前回のコラムで私たちの会社のメイン事業は、戸建て住宅の塗装工事の施工管理業務とお伝えしました。
そもそも塗装工事の施工管理業務ってなんでしょう?
現場で塗装を行う職人さんのことですか・・・?そうではありません。
当社がいう塗装工事の施工管理業務とは、住宅メーカー様から塗装工事を請け負って、安全と品質が信頼できる当社協力会加盟の工事業者様(塗装業者様等)と協力して、安全面・品質面とも高クオリティな状態で工事を完了させて引き渡しを行う業務のことです。・・ますます難しくなったかも!
当社のこだわりである「安全面・品質面とも高クオリティな状態」とはなんでしょうか?
塗装工事においては、いろいろな不具合や緊急事態が発生する場合があります。
安全面においては、私たちは現場の事故撲滅を最優先事項に掲げて、「安全衛生協議会」や「安全大会」を定期的に開催し、現場の安全管理や現場美化に日々努めております。
高所で作業を行うこともあるので、現場KY(危険予知活動)、足場のチェック、安全備品の着用、そして夏季は熱中症対策等 幅広く安全について業者様と情報共有を行っています。
一方、品質面においては、住宅の部位により塗料の種類や塗装の工程(下地処理⇒下塗り⇒上塗り)に違いがあります。
適正な塗料を適正な使用量で適正に塗装工事を行うため、業者様へ指導教育・フィードバックを行い、施工品質の維持向上に努めています。
私たちは業者様とこのような繋がりを大切にすることが 施工管理業務であると考えています。